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Column 03 | 2020.09.10
長く使われているもの程より長く使われる。



長く使われているもの程より長く使われる。

これは「リンディ効果」と呼ばれるもので、技術、思想、企業のようなこわれないものは、人間、ネコ、イヌ、経済理論、トマトのような壊れるものとは違って、1日経つごとに余命が延びるという法則だ。

1964年に作家のアルバート・ゴールドマン氏が著書の中で用いたのが最初と言われている。

例えば、「源氏物語」や「孫子」などの古典の名作は、時代を経ることでむしろその地位を盤石なものとするため、リンディ効果が働いていると言えるのだ。

そして、このような性質を持つ物事は時に「リンディ的」として称される。

私の祖父は、私が学生の頃に病気で亡くなったのだが、小さかった頃に祖父から教えてもらったことは今でも記憶に残っている。

その中でも特段覚えているのが、「ものは長く使いなさい」というものだ。

私の祖父は、事業も趣味も何でもやる人だった。

養鶏場、町工場、不動産、畑、田んぼ、写真、植木、盆栽、そして株。

当然、これらを営むためにはそのための「道具」が必要で、別に大きな納屋が必要になるほど多くの道具を所有していた。

そして、私は小さい頃その納屋をよく遊び場にしていたのだ。

納屋は、私の好奇心を揺さぶるおもちゃ箱だった。

木造りの棚に様々なサイズの箱があって、その箱の中には、鋏、金槌、玄翁、のみ、鋸、墨付けを行う墨壺など様々な道具が入っていた。

釘、螺子、ボルト、ナットなども数え切れないほどあって、それらを組み合わせて「メカゴジラ」のような工作をしていた自分の幼少期を懐かしく思う。

祖父はこれらの道具を使うたびに必ず「手入れ」をしていた。

いわゆる「研ぎ」や「目立て」という作業だ。どんなに日が暮れても手入れをしてから箱にしまった。

隣にくっついてよく見ていたこともあってそのシーンは今でも眼に浮かぶ。

その時によく言っていたのだ。

「ものは長く使いなさい。こうやって手入れをすれば何度でも使えるようになる。壊れたら壊れた部分を直して使えばいい。そうやって大事に長く使いなさい」と。

私は1902年から「斧」を作り続けているスウェーデンの老舗、グレンスフォシュ・ブルーク社のカタログの冒頭文が大好きだ。

祖父を思い出すような文章で、時々読むようにしている。

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「全体に対する責任」

私たちがなにを使い、なにをどう作り、なにを捨てるのかは、実のところ、倫理的な問題である。 私たちは「全体」に対して無限の責任を負っている。

果たそうと常に努力はしているが、必ずしも果たせているとは限らない責任だ。

そこには、製品の品質と寿命も含まれている。

高品質の製品を作ることは、製品を買う人や使う人に敬意を払い、責任を全うする一つの方法だと言える。

高品質の製品は、その使い方と手入れのやり方を心得た人々のもとにあれば、まず間違いなく長持ちする。

これは所有者にとって、つまり利用者にとってすばらしいことだ。

同時にもっと大きな全体にとっても素晴らしいことだ。

長持ちすればするほど使用量は減るし(原材料もエネルギーも使用量が減る)、

生産量も減るし(時間に余裕が生まれ、大事だと思うことや楽しいことができる)、

捨てる量も減る(ゴミが減る)からだ。

長く使えるものを選びましょう。

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古いものは今の時代に合っていないためすぐに壊れそうだ。

一方、新しいものは今までの概念を踏襲したものだから当然良いはず。

したがって、「新しいものの方がより長く使われる」と考えるのは自然のことなのかもしれない。

しかし、世の中には間違いなく「リンディ的な物事」が存在する。

今思うに、祖父の営みも私への教えもまさしく「リンディ的」だった。

この世に無限な資源などはなく、すべてが有限だ。

昨今それを意識させられる出来事も少なくない。

だからこそ、祖父からの教えはこれからの時代を生きるうえで大切な「羅針盤」になりえる気がしている。

写真・文:tanaka shingo







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