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Column 14 | 2021.08.10
「観察」には、生理的な嫌悪感さえも前向きな何かに変えてくれる力がある。



「オイスターリーフ」と聞いてピンとくる人はどれだけいるだろうか?

私がこの野菜の存在を知ったのは昨年のことである。

仕事で訪れた三陸地域のとある海岸で出会った。

オイスターリーフとは、文字通り葉を食べると濃厚な生カキの味がする不思議な野菜。

最初は私も「本当に?」と疑ってかかったのだが、一口食べてみると本当に口の中に生カキの味がジワッと広がっていったのだからこれにはかなり驚いた。

その味は見た目からは全く想像がつかない。

中にはマッシュルームやアンチョビのようだと評する人もいるそうだ。

聞くと、このオイスターリーフは日本では非常に珍しいものだそうで、市場にはほとんど出回っていないという。

あるサイトでは葉30枚で1,600円ほどで販売されている高級野菜。

北海道から東北の海辺に自生しているところがあるという程度でかなり希少だ。



そんなオイスターリーフとの出会いは本当に偶然だった。

少し日陰った浜辺を散策している最中。

周囲をつぶさに観察していたところ、見たことの無いない葉っぱがあることに気付き、側にいた地域住民の方に聞いたところそれが「オイスターリーフ」だと判明したのだ。

つぶさに観察していなければきっと気付くこともなくスルーしてしまっていただろう。

そういう意味で「観察」の力はというのはとても偉大だ。

観察は私たちに新たな発見や知見を授けてくれるのだから。



話は変わるが、以前、盛岡で行われていた「ジブリ大博覧会」にいった時のことである。

博覧会の中には、風の谷のナウシカに出てくる「王蟲」が実物大で展示されており、そこに多くの人だかりができていたのを鮮明に覚えている。

私には王蟲の側に展示されていた言葉が印象に残った。

「嫌いなものや怖いもの、理解し難いものも、観察して分析すれば理解に近づく」

そして、会場で購入したパンフレットの中に、王蟲の造形を担当された竹谷隆之さん(造形家)のインタビューが載っており、これには強く膝を打った。

今回の僕の仕事は、漫画や映画に描かれた蟲や植物を現実の世界に出現させること。

展示を見た人が「本当にいるのかも」と感じてもらえれば嬉しいですが、なによりこれを見たことで、生理的嫌悪感さえも「観察する」眼を持った瞬間に、たとえば「美しさ」を発見したり、前向きな「何か」に変換されるようなことがあれば、これ以上嬉しいことはないと思っています。

竹谷さん曰く、「観察」は新しい発見を私たちに与えてくれるだけでなく、生理的な嫌悪感さえも前向きな何かに変えてくれる力があるというのだ。

スタジオジブリの作品はこのようなことも暗に伝えようとしていると考えたら、また過去作品などを再度観直したいという思いも湧いてきた。



観察とは平たく言えば「よく観る」ということである。

自動車運転の不注意などはまさにそうで、誤った判断をしてしまった時というのはだいたいよく観ていない。

よく観ていれば大きな問題にならなかったことは多々あるのだ。

しかし現代は「よく観る」ことがしづらい環境にあるのも事実。

でもだからこそ「よく観る」という行為の価値が高まっているというのも確かなことだろう。

都市鳥研究家として首都圏の野鳥の観察を続けてきた唐沢孝一先生は、

「明治神宮や皇居にもいるヤマガラ、あるいは多摩川にもいるセグロセキレイなどは、日本人にとっては見慣れた鳥ですが、外国の人にとってはわざわざ日本に来ないと見られない珍しい鳥なのです」

という(*1)。

そう思って改めて観ると、何となく素敵に見えてくるから不思議なのだが、これも観察の「醍醐味」と言えよう。

要は、一つ別の視点が加わるだけで突然「よく観る」ようになったりするのだ。

私に「観察」の大切さについて再び考える機会を与えてくれた「オイスターリーフ」には感謝しきりだ。

嫌いなものも、怖いものも、理解し難いものも。

それと対峙した時にはよく「観察」することを意識していきたいと今あらためて思う。

*1:達人が教える「野鳥観察がもっと楽しくなる」2つのポイント

https://serai.jp/hobby/1034504

(写真・文 Tanaka Shingo)







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